午前4時

晴れた真昼の空に無理やり星を書き足すことでしか自らの呼吸をゆるせなかったあの頃のわたしはきっと今よりもずっとたくましく真っ直ぐでぼろきれみたいにうつくしかったのだろうと真夜中にいれるぬるいミルク紅茶を舐めながらぎゅっと閉じたまぶたの裏に映る一羽の青い小鳥におもう

寄りかかることの心地よさを知ってしまったからひとりで起き上がれなくなってしまった
眠れない夜には窓の向こうから月灯りがこちらに一定の温度で笑いかけてくれたし、明け方こわい夢で目が覚めてもいつも隣にはあたたかな腕があった

生きてゆく上で最もおそろしいことは慣れだ
覚えることは容易くても身体と心が無意識のうちに記憶した習慣を完全に忘却することはできないということをわたしはもっと早く気づかなくてはならなかった
わたしたちはもっと、幸せに慣れてはいけない