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最近すぐかなしくなったりいらいらしたりして、今まで生きたなかで増殖していった自分の毒にじりじりと絞め殺されていっているような気がする
効いているんだかいないんだかわからない薬は気休めにしかならなくて、対して効きもしないのにこんなものに頼らないと生きていけない自分がくやしくて、ただひたすらになさけなくかなしかった

日曜日の上り電車はすいていて、3人がけの座席のすみにすわったとたんぱたぱたと涙がこぼれた
誰も知らないところに行きたかったけど、東京はけっしてひとをひとりぼっちにはさせてくれない街だということを今まですっかり忘れていた
夏の終わり 生き残りの蝉たちが最後の歓声をあげる
笑い方を思い出せない

暗転の先

この世におけるすべての事象は壊れて落ちる瞬間がいちばんきれいだよねってゆったら、きみは残酷だなあって笑いながら目の前のケーキを乱暴に突き刺した
ぼくたちは完全に壊れ果てることなんてできなくて、今夜もかなしみに星座のひかりを灯しはじめる
手をつないだままかなしい星で生まれ 手をつないだままかなしい星でしんでゆきたかった
(ソーダ水 はじける)

歪んだ愛情

割れた赤いレンガの上を裸足で歩いて流れる血を隠すようにひっそりと息をする
壁いちめんに貼りめぐらされた紫のスパンコールがいっせいにこちらに向かってぎらぎらとひかりだす一方で 隣のまっさらな白い部屋でひとり静かにお茶を飲むような日々
きみの精神とぼくの精神を交換してきみをぼろぼろに不幸にしたい

致死量

1本の髪がはらりと肌から落ち持ち主がわからなくなった瞬間に一気にそれは汚いと判断され、あってはならないものへと変化する
うつくしい少女がひたすらに命の実を食べるだけの画集をぼうぜんと眺める、食べることは生きることに直結する、もし殺すことも生きることへつながるとしたらそこにひかりはあるのだろうか

息をするために殺したひとびとと生き残るひとびと
恋や愛が無意味な欲望だと、わたしは知ってしまった
知ることこそが命をどんどん息苦しくさせる要因なのに 心の窒息死は死因として認められないのがこの星のうつくしいところでしょう
せかいがわたしのものじゃないことくらい 初めからずっと知っていたよ

永遠解く力

かっこつけた詩なんてまっぴらだしひとに見せるために書いた言葉なんてごめんだ
わたしはわたしになりたくて、それでいてわたしなんて最初からないようにおもう
海が見たい

無の無

さいきんほんとうにだめで、泣いてばかりでぜんぜん笑いたくないし何にも書けないし詩とは遠いところにいきたくて、何にもないからっぽのこころでひたすらひとの言葉を朗読してる
まっくらやみの中ひかりなんて見たくなくて、手を伸ばすみたいにぷかぷか声だけで漂ってる たましいだけの生きもの

さよならとかなしみに

いつでもこの星を離れてもいいようにさいきんゆっくりと準備をはじめていて、持ちものを少しずつ かつ勢いよく手放している

ほしいものなんていくらでもあって、それなのに対価をはらって手に入れても ちっとも満たされなくって、お財布は軽くなるいっぽうだし比例してこころもどんどんすかすかにすり減ってゆく

お金で買えるものなんてほんとうはそんなにほしくない
ほしいものはもっと、もっとちがうもの

もしほんとうにほしいたいせつなものをお金で買えてしまえるなら、一生分のお金をぜんぶ引換にする

信憑性

明けない夜はないよとみんな言うけど、朝が来てしまうことのほうがこわい