アクリル

透明なちいさなくじらになる夢を見る

愛を知るたび ひとりで生きるのがどんどん困難になっていく

おまもり

ひとからゆずってもらったコートを着て帰宅する
すきなひとたちのおさがりは 何十万円の服やバッグの100億倍の魔力がある
できることなら毎日全身おさがりをまとっていたい
明るい気持ちで明日をむかえ なんのかなしみもほつれもない心でアイスクリームを食べたい
あんしんして愛の魔力にくるまっていたい

フラン

仕事のあと激しい眠気のなか事務所で作業をし、時計が0時を知らせる
ふらふらと鞄をつかみ 上着をはおり 帰りに駅前のスーパーでお茶とパンナコッタを買う

はたらくのも、帰り道に泣きながら明日の自分を決めるのも、笑うのも、ごはんを3食ちゃんとたべるのも、すべてはすきなひとと"いつまでも幸せに暮らしましたとさ"をしたいからだ
このひとと共に生きていくことを決めて、このひとを守りたくて、幸せにしたくて、ふたりで幸せになりたくて、そのきもちがすべてのような気がする
わたしはこのひとと一緒に生きたい
彼と わたしと うさぎの三人で ずっとずっと幸せに暮らせる日を夢みて今日も眠る 明日も明後日も生きていく

スプリット

月の見えない夜空とか 指先にからむとがった空気とか そういう届かない祈りにひきさかれながら 背中から抱きすくめられるたび わたしは自分の星へ帰りたい
この星を旅立つまでに どれくらいの愛を知り どのくらいの愛をさしだせるのだろう
氷漬けの都会の夜を裸足で歩きながら わたしの中にすむ毛むくじゃらのぬいぐるみをさがした
つぎはぎだらけのぼろぼろの愛が ひやひやと月あかりを反射する
知らない星の 知らない愛の言葉が流れる