心電図

春の海へでかけるための白いワンピースを買った
あたらしくしゃぼん玉も買った
こんなに次々と夢が叶ってしまって わたしはいったいどうなってしまうんだろう
醒めない夢はないと あたまではわかっているのに
こころがついていかない
目を閉じると波音が聴こえる

0.1 gram

ひかりがきれいだということはおそらく多くのひとらが理解していて、だとすれば少しのひかりもない暗闇を美しいとおもうひとはいるのかな

ひかりのまったく射し込まないせかいできみを見つめようとしても見つけられなくて わたしはただ生ぬるい深海で感情を切り棄てて漂うことしかできずにいる

右手の薬指に触れた鼓動だけを頼りに息をする

留守電

アパートの近くの池にひろがるちいさな無数の波紋を眺める
水面に落ちた桜の花びらが池の縁に淡いピンクの河をつくっていて
そのぼやけた色彩がいっそうわたしを孤独にさせる

どうしてこんなにもかなしいのか
わらうことがつらくて 日常をやりすごすだけで精一杯で
いつから どこで まちがってしまったんだろう
ずっとわからない
人間にやさしくできないこと
じぶんにやさしくできないこと
だれもわかってくれないことへの嘆き
またはだれもわからないことへの嘆き

だれかがそばにいるときのほうが
わたしはまぎれもなくひとりぼっちだ
部屋でひとりになって やっとすこしだけ気がほどけた
生きるためにはがんばるをがんばることがあたりまえで
それがじゅうぶんにできないわたしは
この星へ落ちてきたときからとっくに人間じゃなかったよ

どこへだって行っていいはずなのに
わたしは裸足のまま まっくらやみの中でうずくまってる
うごけない

melt

きたない感情をことばにしてしまったら こころ自体が黒く歪んでしまう
わかっているのに わたしのこころはどこまでも汚いから よごれた感情がいくらでもあふれでる
こぼれた真っ黒な海にのまれて そのうちわたし自身に毒がまわって死んでしまう

だれもいない場所へゆきたい
たとえば砂丘
どこまでも砂しかない空間
ひとのいない美しいせかいで
だれにも気づかれずに砂にとけて死にたい

祈り

欲しかったマーチンの靴が品切で買えなかった
でもすべての巡り合わせは必然だから まだ時期じゃないだけだったんだとおもう

できるだけあかるくてきれいな気持ちを保っていたい
前を向いて 日々のひかりに目を細めたい

すべてには終わりがある
幸せな瞬間にも 先の見えないかなしさにも

いつかすべて大丈夫になる
わたしはわたしを信じたい