むかえにいかなくちゃ

だれもをすきになることはできないけれど、暗やみに揺れるちいさな蝋燭のあかりのように こころの奥に愛の熱を灯しつづけることはできる
消えない火を掲げる  愛は祈り

散りばめられた記号をたどる

わたしたちが共に暮らす部屋は この星のどこにもなく、この部屋はわたしの部屋で、ただそれだけのこと
幸せに慣れない  慣れることができる日なんてずっと来ない気がする
空は青い  上を見て歩く ひかりに溶けたい

ほしくず

きみのめに映る青と わたしのめにうつる青
似ているようで ぜんぜんちがうものなんだろ
遠くを見つめるきみの横顔が あまりにも透明で かなしくて
わたしはひとりで こんなところまで来てしまった

わたしたちは別々の星の住人で
それでも わたしたちは ここにいて ひとつの生きものになろうとした

わかるよ、といいたかった

きみの青に この指先がけっして触れられなくても
それでも、わかるよ、といいたかった

わからなくても、わかれなくても
夜の風にひやひやと揺れる まっすぐな髪を見つめながら
わかるよ、と きみを抱きしめたかった

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命の果てがこわい
愛するひとの呼吸が止まること、今のあたたかな暮らしがいつか終わること
ちっぽけなたましいがわたしといううつわにしがみついて定めに抗おうとする
それでもわたしたちには限りがある

死ぬことがずっとこわくなかった
はやく寿命が来ますように、はやく自分の星へ帰りたいとすらおもっていた
そのわたしが今、死にたくないとおもっている  愛するひとにずっと生きてほしいとおもっている
隣を歩くうつくしいひとの髪が夜の青い風にひやひやと揺れるたび永遠を願う、ずっとこうして手を繋いで笑っていたい、手を繋いでひとつの家に帰って、ごはんを食べ、抱きしめあって眠りたい
でもそのささやかなつよい祈りは、決して届くことがない

愛することを知り、愛されることを知ってしまった
愛は希望で、そして絶望なのだとおもう
生きることがこわい  死ぬことがこわい
切り傷から溢れでるひかりの洪水にのまれてくるしくて息ができない
だけれど、だからこそわたしはこの傷みをぜったいに忘れてはいけないのだとおもう
愛したこと、愛されたこと、この命が終わる瞬間まで、生きていてよかったとおもっていたい

きやきやのかけら

わたしの中で燃える星、溶けあい、まばたき、
次々とできあがっていく無数の透明な花束
灰色のせかいに散らばる宝石を拾いあつめて
ここまできた

はな唄が合唱になっても おぼえていてね
壊れそうなひかりの明滅たぐりよせて
祈りの呼吸を青の向こうに投げたこと

月の舟にのり 流れてゆく 夜明まえのあかり
わたしたちは かなしい やわらかなけもの