デルフィニウム

だいすきなリンツのカフェでフランボワーズのチョコケーキを食べた
冷えすぎた店内の隅の席で頭を壁にあずけながら 何をするでもなく 二人組の女子高生や子連れの家族をぼうっと眺めていた

考えごとをするたび 食べることに頼ってしまう
考えれば考えるほどわからなくなって むずかしい顔のまま おいしいものをどんどん食べてしまう
食べて 不安なきもちを埋めようとしてしまう
おいしいものは いつだっておいしい

ひとはいつだって嘘をつく
相手を傷つけないため 守るために嘘をつくたび
自分の心を爪でぎりぎりとえぐるようなきもちになる
自らを傷つけることだとわかっているのに
たいせつなひとに 何度もくりかえし嘘をつく
どうせつくなら 純度の高い水晶のような誠実な嘘をつきたい

ひとりは おそろしく自由であり、身軽だ
どこへだっていける、とおもう
どこへだっていっていいはずなのに、どこへもいけずにいる
青い涙をながしながら たったひとつのことをからっぽなからだで抱きしめている