プリズム

珈琲を淹れると あなたに会いたくなる
あなたのすきな花を見つけるたび あなたに会いたくなる
わたしはひとり あたためた部屋でぬいぐるみを膝にのせ
アイスクリームを食べながらゆらゆら揺れる
むかし通りすぎたうたを ぽつり ぽつりとくちずさむ

だれかをうんと愛しても うんと愛されても ひとは孤独だとおもう
あなたという島にたどりつきたくて けんめいにもがくけど
満月と三日月が隣り合わせに揺れる祈りには勝てなかった

0から100までのゆるやかな坂をのぼり ゆっくりと降りてゆく季節
1が0にもどるまでの距離をのばしたくて 逃げ出そうとした
舞い踊る枯れはてた海のかけらを飲み込むような嘘を 指にはめて

逃げるたびに近づいて 触れるたびに遠くなる
パステルカラーに裂かれた傷口に反射するひかり
滲んでゆく記憶の中
プリズムに溺れていたい