白昼夢

100年後にはわたしも彼も死んでいるのに、それでもわたしは彼のいない毎日を綴じてゆくのがやっとで、ずっとあの8月の交差点から動けずにいる

わたしの指がいっぽんでも欠けてはいけないのは、彼のつやと濡れたようなうつくしい真っ直ぐな髪をそっと梳くためであったし、わたしの瞳が大きくひらかれているのはふたりの真夜中にいつも浮かんでいた月を心にしっかりと縫いつけるためだった それは確かな真実だった

100年後にはわたしも彼も死んでいるのに