留守電

アパートの近くの池にひろがるちいさな無数の波紋を眺める
水面に落ちた桜の花びらが池の縁に淡いピンクの河をつくっていて
そのぼやけた色彩がいっそうわたしを孤独にさせる

どうしてこんなにもかなしいのか
わらうことがつらくて 日常をやりすごすだけで精一杯で
いつから どこで まちがってしまったんだろう
ずっとわからない
人間にやさしくできないこと
じぶんにやさしくできないこと
だれもわかってくれないことへの嘆き
またはだれもわからないことへの嘆き

だれかがそばにいるときのほうが
わたしはまぎれもなくひとりぼっちだ
部屋でひとりになって やっとすこしだけ気がほどけた
生きるためにはがんばるをがんばることがあたりまえで
それがじゅうぶんにできないわたしは
この星へ落ちてきたときからとっくに人間じゃなかったよ

どこへだって行っていいはずなのに
わたしは裸足のまま まっくらやみの中でうずくまってる
うごけない