ひみつの地下室にある 満月のとびらをこじあけ 階段をのぼると
せかいには うすももの夜が流れ出す
冷えた右手につかんでいた深い海の風船は はなたれて
かわりに 青い宝石に似たくだものが 白い手のひらを熱く やわらかに染めていた
わたしというからだの中にいる わたしのことを
とうめいなまばたきの途中に 思い出そうとする
壊れた蛇口からこぼれるしずくのように
夜のすきまに ぱらぱらと剥がれおちる記憶は
流星のしっぽのかたちをして 一瞬のつよいひかりを送り 降りそそぎ 消えた
あす 朝がきて せかいが春のいろに目をさまし
ふたつの星が 朝つゆのひかりにいっせいにうたいはじめたら
わたしは きっと この星の住人になろう