ポケットの氷砂糖が カラカラと泣く月夜 レモンドロップの風に 目をすます わたしたち、いくつかのはなしをしたね かみさまのこと、旅先でみた青い街のこと、 水晶でできた川のこと
見あげれば 春の花のかたちの空が たよりない ガラスの舟に揺れる
ほどけそうな夜から こぼれてしまう前に 向こう岸から わたしの名を呼んで
わたしというなにもない部屋の床に散らばった無数の鮮やかなビーズをひろいあつめ 薄い真白なハンカチで ひと粒 ひと粒 ぬぐってゆく いくらみがいてもビーズが宝石に変わることはない、だけれどつくりものにしか生めない儚いひかりがあるのだ、きっとたしかに 大人になれない子ども 子どもにもどれない大人 ろうそくの灯りの青いゆらめきを見つめるようなやわらかいさみしさを この星を離れるまで何度も何度も腕にきざんでいたい
恋人から突然散歩のお誘いがあり いつもの駅で待ち合わせ、歩いて府中までゆく 恋人はいつもやさしく、にごりのない水晶のような愛をまっすぐに差し出してくれる わたしは彼がとなりにいるだけでうれしくて、ついはなうたをうたったり 彼の顔を何度ものぞきこんだりしてしまう このひとをとてもすきだとおもう
炊きたてのごはん 干したてのおふとん いつだってあたたかなやわらかいこころで ひとやじぶんと向き合いたい だれも憎むことなく ひかりに腕をのばしたい ずっと ずっと うれしくて笑っていたい