ベガ

夏が壊れてゆくようすをまばたきせずに見つめながら
せかいはかなしいとわらったきみの横がおをぼくは憶えている
錆びた心臓に指が触れて
そのさきからぽろぽろとくずれていったね
届かない雨の中に部屋をつくって
はだしになってうずくまり
涙で育つ青い植物に水をやり
見あげた窓越しに浮かんだ月は今晩も鮮やかにかがやくんだ
ぼくはきみを遠い夜に葬ることができず
くりかえし綴った手紙をぼくの星からきみの星までとばそうとする

花もしんで
星もしんで
みんなしんで
きみだけになって
夜の静寂だけがそこに残って
それでもきみはわらうのだろう
遠くの星できらきらとひかるきみを見あげながら
立ちすくんだまま100万年がぼくを連れ去ってしまう