すこやか

母の幸せはわたしが幸せになることで、わたしの幸せは母が幸せになること
わたしが幸せにならなければわたしも母も幸せになれないのに、わたしはわたしにとっての幸せがずっとわからなくて、こうしてわんわん泣きながらスーパーにゆき意味わからないサンリオのチョコレートを買っているなんて母が知ったらきっと泣いてしまう

欠片

大切なものができるたび心臓にまたひとつ重石がつき 旅の終わりから少しずつ確実に遠ざかっている
生きることが正しいことで 生きることをやめることが間違っているなんて ほんとうにそうなのだろうか
感情が死んでも それをいれるうつわは呼吸をくりかえす
わたしにとっての生命維持装置のようなひとびと
心が重すぎてわたしはこの星から旅立てない
わたしはわたしを救うために もう誰も愛したくない

水の輪

顔は忘れても声や話し方は今も記憶からこぼれていない

歳月

ひとと一緒にいることでしか生まれないかなしみがあり 同時に愛されることでしか紛らわすことのできないかなしみがある

雨が降った

だいすきなものがわたしを壊すのではなく だいすきなものをだいすきとおもうわたしの感情がわたしを壊していくのだろう

はな唄をうたった

ひとびとが寝静まった真夜中の道を照らす街灯は だれのためのものなのかな
午前3時 はだしのまま出たマンションの屋上から街中に散らばったちいさな白いひかりを見つめた
あるべき感情とあってはならない感情のすきまに腰をおろしてスカートの裾のしわばかりを気にしていた
かたく結んだはずの糸がほどけてしまうとき いつも雨のはじまりのにおいがする 

冬のくだもの

ほんとうのなまえなんてひとつなんだからわたしは何もこわがることなんかなくて、月がきれいとか あの子がわらってくれるのがうれしいとか それだけでいいじゃないか
かじかんだ指先の温度でゆっくりと溶けるチョコレート わたしのなまえを呼んで