サクラメント

ずっと変わらずたいせつに想い続けられるものって このせかいにいくつあるのだろう

駅までむかう道で前を歩いていた女のひとのスカートの裾に ゆったりと風が絡むさまがうつくしかった
うつろう季節のあまい香りがこころもとなくて涙がこぼれそうになった
もう会えないひとたちにはたぶんほんとうに二度と会えない

白い部屋

老いてゆくにつれて からだじゅうをおおっていた棘がしゅわしゅわと溶け 少しずつこの星を去る準備をする
憎んだり あすをのろったり そんな日々もゆっくりとほどかれてゆく

だいじな想いも景色も時間も ぜんぶひと粒もこぼさずに抱きしめるには わたしはまだまだ若すぎて
わたしははやく もっともっとおばあちゃんになりたい

ひとはかわいい
生きてるだけで こんなにも
わたしたちはみんな 宇宙の手のひらから散った ひかりの子ども

はだかになったたましいで わたしはどこまで飛べるかな

暮らすという旅のいたるところに やわらかい毛布のような手触りをさがしている

木蓮

ちからづよい生に触れる瞬間 それらは同じくらい死のにおいがする
それでもわたしは何度も何度も手を伸ばそうとする

思い出すことで きっとそれはもう過去なんだ
わたしは変わってゆく
生きてる、をつかもうとしてる

あの頃

何度季節をくりかえしても 思い出すたびに胸の奥がじゅっと焼けるような痛みがともなうのは わたしにとってそのできごとがたいせつだったということを心が理解しているからなのだろう
だれかからもらった痛みは多いほうがいい 傷あとはいつかかならず大きなひかりに満ちる
わたしは傷だらけの両腕であふれるひかりを抱きしめたい

ピクニック

月のないベランダへ毛布をひきずりながらはだしのまま出たり 真夜中にホットミルクで乾杯したり 部屋のなかにシートをひいておむすびを食べたり

地球はなんてうつくしい星なんだろう
やわらかくて あたたかくて つめたくて
まるでかなしいくだものみたい

わたしはゆっくりこのからだを脱ぎ捨てながら この星でながいながい旅をしている

抱きしめる

ぬいぐるみは目に見える愛だよ