1207

命の果てがこわい
愛するひとの呼吸が止まること、今のあたたかな暮らしがいつか終わること
ちっぽけなたましいがわたしといううつわにしがみついて定めに抗おうとする
それでもわたしたちには限りがある

死ぬことがずっとこわくなかった
はやく寿命が来ますように、はやく自分の星へ帰りたいとすらおもっていた
そのわたしが今、死にたくないとおもっている  愛するひとにずっと生きてほしいとおもっている
隣を歩くうつくしいひとの髪が夜の青い風にひやひやと揺れるたび永遠を願う、ずっとこうして手を繋いで笑っていたい、手を繋いでひとつの家に帰って、ごはんを食べ、抱きしめあって眠りたい
でもそのささやかなつよい祈りは、決して届くことがない

愛することを知り、愛されることを知ってしまった
愛は希望で、そして絶望なのだとおもう
生きることがこわい  死ぬことがこわい
切り傷から溢れでるひかりの洪水にのまれてくるしくて息ができない
だけれど、だからこそわたしはこの傷みをぜったいに忘れてはいけないのだとおもう
愛したこと、愛されたこと、この命が終わる瞬間まで、生きていてよかったとおもっていたい