あなたがくれた宝石のまばゆさで凍った胸に溶かしたひかり
満月をインクベリーで染めた夜に枯れる花束 待ち人は来ず
心臓に夏のくだものとじこめて結ぶ小指のリボンをほどく
絶望にさえもなれない 夕立のなかに死にゆく季節をさがす
涙で育つ植物に水をやる午前3時の青き静けさ
桃を剥いた手が透明に染まりゆく 泥にまみれた傷だらけの手
罪人の靴を玄関でそろえる 守るから わたしが守るから
ひらいた手からこぼれては 咲き こぼれ 永遠に満ちることなきうつわ
走馬灯駆け抜け真珠の連なりを裁ち切る恋の夏の葬式
やわらかい宝石になりたい 雨のベランダで夏に青く溶けたい
グラス越しソーダ水の泡を数え 弾ける粒に込めた神さま
ひと匙の憂鬱は炭酸で薄めました 目を閉じ想う灯台
金色の小鳥をはなち氷の道をひとりあたしは裸足で歩む
真夜中にあんず水でからだを清め 灯すランプの薄暗い部屋
スカートの裾で受けとめる紫の涙のゆくえ ひとはひとりだ
バスタブに揺れる紫の涙の海 三日月の舟は帰らず