水晶でできた街を想う
とばり
珈琲豆を買いにいった喫茶店でお茶をし、ながいこと読み進められずにいた小説を読了して顔をあげると向こう岸のせかいはすっかり群青いろにどろりとくるまれていた
だれにもきこえないほどのおおきさで だれにも伝わらないことばを唄うようにくちびるに留める
ショートケーキとダークチェリーと珈琲
まぶたを結んでも赤いひかりがにじむ
きっとずっとほんとうの絶望なんて知れない
ファントム
明け方、窓辺に置いた水栽培の球根のグラスを少しだけ傾け、また静かに戻す。
闇の中でゆるくたゆたう白い根は暗い海にひそむ深海魚のようだった。
ずっとむかし、自分につけたあたらしい名まえ。音もなくつぶやく。古い呪文。
愛でさえも太刀打ちできないかなしみなんて、最初から死んでほしかったし、愛してしまいたかった。
夜が明けたらわたしは透明な魚になる。
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