明け方、窓辺に置いた水栽培の球根のグラスを少しだけ傾け、また静かに戻す。 闇の中でゆるくたゆたう白い根は暗い海にひそむ深海魚のようだった。 ずっとむかし、自分につけたあたらしい名まえ。音もなくつぶやく。古い呪文。 愛でさえも太刀打ちできないかなしみなんて、最初から死んでほしかったし、愛してしまいたかった。 夜が明けたらわたしは透明な魚になる。