掬う

わたしはわたしの中にいる神さまをどのくらい信じてあげられるだろう

箱庭の夢

わたしの中にある思い出をしまっておく箱の大きさにはかぎりがあって 大切な過去も少しずつ順番にあふれてしまう
でも箱に入りきらずにこぼれ落ちてしまった記憶はみんな星に帰ってゆける気がする
雨が降って土にしみこんでゆくように きっと記憶のかけらたちは溶けてゆっくり時間をかけてこの星に吸収されてゆく

忘れることと失うことはちがう
こぼれた記憶はすべて地球の思い出になる
わたしは忘れることに対してもっともっと勇敢でありたい

晩餐

いちにちの終わり 夜の水槽に落ちた月灯りのした
満月とチーズケーキをナイフで切り分けるように ひと切れの夜をそれぞれのお皿にのせ 向かい合い手をあわせる

ひかりで満たしたぴかぴかのうつわをあすの自分へたくすこと 生きることはたましいへ終わらない贈りものをすることだとおもう

わたしのからだのなかで満月の切れはしが燃えている

6等星

あなたはまるで夜空のすみにうまれた新しいひかりのようにみずみずときらめいて その名をそっと唱えるたび 青くてちいさな水晶が いびつなわたしのくちびるからぽろぽろとこぼれてゆく

うまれるずっと前からあなたを知っていたよ 星のおかあさん 月のおとうさん 手のひらのゆりかごの中でぷかぷか笑う神さま

わたしがわたしになるずっとずっとむかしから吹く風が頬に触れて
あなたに会うためにわたし ここへ来た

アスファルト

神さまにも悪魔にもなれなかった

灯台

つくるということは歩いてきた道にパンくずをこぼしてゆくこと そしてわたしの後をゆくもうひとりのわたしがまっくらやみの中その落としたかけらをひとつずつ拾いあげながらたどってゆくこと 夜の森に置いた金色の無数のパンくずの部屋に住むちいさな神さま わたしのからだの内側にそびえたつ灯台からもれるあかりがこぼれないように ふたつのからだでぎゅっと包んだ

カヌレ

からだの外へとぎれとぎれに落とした言葉を拾い集め つなぎ合わせるまでをゆっくり待ってくれる 掬いあげるような目のひと
手渡されたばら色越しに映る瞳の向こうに一匹のやさしいひつじを見ていた