snow in summer

6月が終わろうとしている。今日梅雨が明けたらしいことをSNSで知る。夏。あたしは夏のことがだいすきで、くるしいくらいに恋していて、そして、とてつもなく憎い。夏はたくさんのものが生まれ、生き、そして死んでいく。
かなしい夏の過去の記憶がとぎれとぎれに浮かんでは据えてゆらりと消える。あたしはあたしをくるしめるおもいでにぜんぶ死んでほしいとおもう。くるしくて醜い偽りの愛はぜんぶ死んで。

恋人はとてもやさしい。あたしにもったいないくらいやさしく、頭がよく、冷静で、美しいかたちをしている。あたしは彼の煙草をもつ繊細な指や、笑ったときにのぞく右側の八重歯や、細い三日月のような下睫毛にいつだってみとれてしまう。なんて美しいひとだろうとおもう。あたしは愛するひとの左側を歩きながら、澄んだ深い青色の宝石を見つめているようなきもちになる。だいすきで、だいすきで、想うだけで涙が出てしまう。かつてこれほどまであたしに大切に触れた男はおらず、またこれほどまであたしが誰かをすきになったことはなかった。あたしはこのひとを絶対に守りたい。絶対に守って、あたしはこのひとをしあわせにしたい。

半夏生。あたしがこの世に発生した日があと数日で来る。すきなひとのとなりでその日を迎えられることが心からうれしい。うれしいのに、どうしてこんなに胸がくるしいのだろう。生まれた日があるということは同じように死ぬ日もかならずやって来るのだ。あたしは死ぬ。彼も死ぬ。愛するひとを失うことが、あたしはこんなにもこわい。死なないでほしいとおもう。ずっとずっとながく生きて、真夜中に一緒にコーヒーを飲んだり、ごはんを食べたり、うたったり、手をつないで散歩したりしていたい。でもそれは決してかなわない。

命に限りがあってよかった。すきなひとが生きていてよかった。抱きしめるとあたたかく、やわらかで、ひたすらにやさしい。尊く美しい最高の生きもの。あたしはこの奇蹟みたいなたからものをずっと大切にしたい。