川に浮かぶ花びらの行く末を見逃すな

結婚できなくてもいいという覚悟で 恋人と一緒にいると決めたけど、それでもやっぱり みちゆく夫婦や幼い子連れの家族とすれ違うたび うらやましくて かなしくて ひとりになると涙があふれてしまう、それはわたしには一生縁のないかたちだから、あきらめた幸せだから

自分で決めた、あたまではわかっている、それでも、どうしてすきなのに家族になれないのだろうと心のどこかでおもってしまう
おなじ家に帰り、一緒にごはんをたべ、朝を迎える そんなあたりまえの穏やかな毎日を彼と繰り返したいだけなのに、どうしてできないのだろう

わたしはただの平凡な女だった
母はわたしに、すきなひとと結婚したいのはあたりまえのことよ、と言った
あたりまえの想い、あたりまえの幸せ

わたしは彼の人生を背負う権利すらない、一生

l t

きみにみとれているうちに
すっかり夜はおちてきて
すっかり紅茶はさめてしまう
くすんだ海に落ちた月は
うすっぺらい昨日を綴じてゆくんだ

みつめあう瞳にぼくが揺れる
いつだってぼくの中でわらう
きみの会いにいったよ

金色の時間に ぼくら 自由になれた
かなしいことは
ぜんぶ春のせいにして
夜の魔法がとけるまで

みつめあう瞳にぼくが揺れてた
いつだってぼくの中でわらう
きみに会いたかった

きみにみとれているうちに
すっかり季節は揺らめいて
すっかり紅茶はさめてしまう
よごれた海に落ちた月は
たよりない今日を綴じてゆくんだ

lemon tea

彼がしんでしまって うさぎもしんでしまったら わたしはほんとうに明日や明後日やその先の何万回の夜をどうやって越えたらいいのだろう
尊いいのちたちに生きてほしい  ずっとずっとすこやかに笑っていてほしい

足止め

やらなければいけないことがあるのはとてもいいこと
家事をし 仕事へゆき うさぎのお世話をし 個展の準備をする、まいにちをくりかえす
忙しいととてもすくわれる、だけれどふとした隙間のじかんにとてつもなくかなしくなって ほろほろとひとり泣けてしまう お花のかたちのお干菓子みたいに一瞬のうちに溶けてかたちをなくしてそのまま消えてしまうような気がする

ぬいぐるみをだきしめ かなしみが通りすぎるのをまつとき、決まってすきなひとに会いたくなる
すきなひとに会いたくて、会いたくて、胸がはりさけそうだ
ふたりでいるしあわせを知ってしまってから わたしはどんどん弱くなってしまう

うつくしい晴れた海をみたい
初夏の海がいい、永遠みたいにおもえてしまうような、澄みきった青に抱きとめられたい

プリズム

珈琲を淹れると あなたに会いたくなる
あなたのすきな花を見つけるたび あなたに会いたくなる
わたしはひとり あたためた部屋でぬいぐるみを膝にのせ
アイスクリームを食べながらゆらゆら揺れる
むかし通りすぎたうたを ぽつり ぽつりとくちずさむ

だれかをうんと愛しても うんと愛されても ひとは孤独だとおもう
あなたという島にたどりつきたくて けんめいにもがくけど
満月と三日月が隣り合わせに揺れる祈りには勝てなかった

0から100までのゆるやかな坂をのぼり ゆっくりと降りてゆく季節
1が0にもどるまでの距離をのばしたくて 逃げ出そうとした
舞い踊る枯れはてた海のかけらを飲み込むような嘘を 指にはめて

逃げるたびに近づいて 触れるたびに遠くなる
パステルカラーに裂かれた傷口に反射するひかり
滲んでゆく記憶の中
プリズムに溺れていたい

ひかりのかけら

あなたのうしろから みずいろの風が吹いてきて
原色にぬりつぶした ちいさな風ぐるまが
せーの、で まわりだす

まっしろな ふたつの星が落とした ひかりの石を
とじたまぶたで見つめながら
あなたのかけらに わたしの影をさがす

くりかえし ひろげられる星は
どこまでも透明な方法で 一輪の花を染め
ひかりの闇のなかにある ほんとうのひかりに触れようとした
産み落とされる いくつもの宝石を
あつめていた真昼

みずいろのせかいにこぼれる花に 澄んだ実をかざし
あざやかに彩られたからだで
あすの向こうへ くるくると踊りはじめる

終わらないうたをうたう

たとえば壊してしまいたいものを水晶に閉じこめて叩き割ったとしたら、それは消滅するのだろうか
なくなってほしいもの、消えてほしいもの、存在してほしくないもの
きれいに消し去ることができるのだろうか、最初からなかったみたいに

壊したいのは、感情
誰かが誰かをいとおしくおもった過去、景色、積み重ねられた日々

今がすべてなのに、その世界中にたったひとつしかない宝石がうらやましい
触れることができない  一生触れられない