留守電

アパートの近くの池にひろがるちいさな無数の波紋を眺める
水面に落ちた桜の花びらが池の縁に淡いピンクの河をつくっていて
そのぼやけた色彩がいっそうわたしを孤独にさせる

どうしてこんなにもかなしいのか
わらうことがつらくて 日常をやりすごすだけで精一杯で
いつから どこで まちがってしまったんだろう
ずっとわからない
人間にやさしくできないこと
じぶんにやさしくできないこと
だれもわかってくれないことへの嘆き
またはだれもわからないことへの嘆き

だれかがそばにいるときのほうが
わたしはまぎれもなくひとりぼっちだ
部屋でひとりになって やっとすこしだけ気がほどけた
生きるためにはがんばるをがんばることがあたりまえで
それがじゅうぶんにできないわたしは
この星へ落ちてきたときからとっくに人間じゃなかったよ

どこへだって行っていいはずなのに
わたしは裸足のまま まっくらやみの中でうずくまってる
うごけない

melt

きたない感情をことばにしてしまったら こころ自体が黒く歪んでしまう
わかっているのに わたしのこころはどこまでも汚いから よごれた感情がいくらでもあふれでる
こぼれた真っ黒な海にのまれて そのうちわたし自身に毒がまわって死んでしまう

だれもいない場所へゆきたい
たとえば砂丘
どこまでも砂しかない空間
ひとのいない美しいせかいで
だれにも気づかれずに砂にとけて死にたい

祈り

欲しかったマーチンの靴が品切で買えなかった
でもすべての巡り合わせは必然だから まだ時期じゃないだけだったんだとおもう

できるだけあかるくてきれいな気持ちを保っていたい
前を向いて 日々のひかりに目を細めたい

すべてには終わりがある
幸せな瞬間にも 先の見えないかなしさにも

いつかすべて大丈夫になる
わたしはわたしを信じたい

結ぶ

霧雨の踊る春の原っぱでパーティーを

薔薇のケーキ

しごとを終え 外に出た午前3時
雨に濡れた冷めた夜
深いインクをのみこんだような空
傘をささずに
オーバーのポケットに手をいれて歩く

からだごと感情ごと雨に溶けてしまえたら
どんなに楽だろう
あの頃祈るように聴いていた
だいすきだったはずの歌を聴いても
少しも泣けなくなってしまった

くだもの

命をやわらかに削られながら
引き換えに手にいれるひかり

わたしたちは
失うことで 生きて
いつだって差し出しながら
息をして

何かを手にするには
何かをなくさなきゃいけない
それが今
やっとわかった気がするよ

コーヒーフロート

隣にいるのに
ひとりでいるよりもずっと
ひとりぼっちだった